成澤 博さん:チャド NGO緑のサヘル 現地事務所

1.UNVに参加した動機や経緯について教えていただけますか?

国連ボランティア計画の中に、NGO枠というスキームがあります。
これは、日本政府が積極的に国連ボランティアの派遣増員に取り組む中、国連ボランティア計画のパートナーであるNGOにもその派遣対象が広められたもので、現役のNGOスタッフをUNVとして派遣出来るという制度です。私は緑のサヘルというNGOに所属しておりますが、私の前に2名、このスキームを活用してUNVとして活動していた人達がおり、私もこの制度を活用したいと思っていました。その後、私自身がチャドに派遣されることになったのですが、緑のサヘルからこのスキームを利用する意思を確認され、私が承諾したことから手続を開始し、今回の派遣ということになりました。

2.チャドでの業務の内容はどのようなものでしたか?

私は、緑のサヘルのプロジェクト調整員としてUNVから派遣されました。業務内容は、首都にベースをおいてのプロジェクト調整、資金管理、業務報告などで、さらに定期的に現地視察なども行ないました。緑のサヘルのプロジェクト内容は砂漠化防止を目的とした植林を中心とする環境保全活動と、住民組織の自立を目指した住民組織支援活動で、育苗所設置、植栽活動、植生保護区、改良カマド普及、穀物クレジット運営、村落積立運営、組織強化講習会などの支援を、専門知識を有するスタッフ、普及員らと共に実施していました。また、UNVの立場を生かしチャドの諸国連機関に積極的にコンタクトした結果、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との実施パートナー契約に漕ぎ着けました。さらに、ジュネーブにおけるUNHCRのNGOとのコンサルテーション会議にも参加し、必要なロビーイングも行ないました。

3.成澤さんの場合は、NGO枠という特別のスキームの下で参加されましたが、NGO活動に携わりながら、そこにUNVとして参加するというこのスキームの長所と思われる点、また逆に苦労した点などあれば教えてください。

おそらく、国連機関などに派遣されるUNVは、まず職場の人間関係や業務内容の把握などで少々の時間がかかると思いますが、NGO枠の場合、自分が所属しているNGOへの派遣ですから、赴任直後からそのまま業務の遂行が可能であるという点が長所だと思います。私の場合、それ以外に個人のセキュリティレベルが格段にアップしたことが良かったです。セキュリティに関しては、UNVも国連職員も同じ扱いとなり、チャドではハンディ無線機が支給され、それが定期的連絡や緊急時の連絡手段になるなど、非常に心強かったです。しかし、そのセキュリティが少々困ったことになりました。UNVになる前までは、現場への出張は自由に組むことが可能でした。しかし、UNVになったことにより、セキュリティの関係上、現場への出張は事前申請しなければならず、時には担当者が不在で出張ギリギリまで許可が下りない、もしくは出張後に許可書をもらいに行くというようなこともありました。急を要する現場への出張が難しくなってしまったのです。個人的な旅行についても許可が必要で、しかも車輌はセキュリティレベルの高いもの、つまり一般のローカルバスに乗ることなどは、許されませんでした。セキュリティはややこしく、かつ高くつくものだと思いました。それでも、他国で国連職員が殺害されるという痛ましいケースが発生するたびに、セキュリティレベルは下げられない、最優先の事項であるのだという認識も強まりました。

4.チャドでの活動で充実していたこと、特に感じたことなどあれば。

UNVにしろNGOのスタッフであるにしろ、チャドという異国で活動することにより、異文化に触れ、考えながら、現地の人と徐々に近づけることを実感出来るときが一番充実していました。特に、UNVとなってからはNGOの中だけでは会うことの出来ない人と話し合う機会が格段に多くなり、自分の語学力が向上することも然ることながら、より現地を知る機会に恵まれました。これには、援助に関わる外国人も含まれ、援助を実施する側として色々なことを考えさせられたりもし、いい経験だったと思います。

5.逆に苦労した点は?

このスキームは日本独自のものなので、通常のUNVと若干違うという違和感はありました。というのは、UNVは国連機関に派遣されるのが常ですが、私の場合はNGOへの派遣でしたので、UNVであるという実感が時には薄れてしまうこともあります。それを常に思い起こし、ボランティア精神を発揮出来るよう腐心しました。しかし、一ボランティアとして求められていた行動が取られたかは、今となっては疑問です。例えば、ベニン人のUNVは、国連職員のクリニックで医師をやっている傍ら、定期的に孤児院を訪れ、子供たちを無料で診療するなど、“UNV”らしさを発揮していましたが、私は残念ながらこのような活動はしませんでした。

6.これからUNVとして参加される方へのアドヴァイス

他のUNVとの連帯感などが感じられたときは、やっていて良かったと思いました。UNVは色々な国から来ていますが、皆の背景は様々です。しかし、ボランティアであるという点は共通しており、そのために直ぐに打ち解けられる。また、新しいUNVが来れば仕事では直接関係がなくても、何かしてあげたいと思う、そんな連帯意識が育まれるのも、UNVプログラムの良い点だと思います。世界中のボランティアと出会うために、UNVプログラムを利用することをお勧めします。

どうもありがとうございました。