栗原 真由花さん:ガンビア

世界で活躍する日本人国連ボランティアからの現地報告(1)

UNVは、各国のUNDP現地事務所の中にUNVフィールド・ユニットを配置し、プログラム全般を管理・運営する国連ボランティアをUNVプログラム・オフィサー(PO)として派遣しています。
日本からも毎年5人程度がこの要職についています。
今回は、今年3月までの2年間、日本政府の財政支援の下、ガンビアのUNVPOとして活躍した栗原真由花さんが現地で行っていた活動を紹介します。

(写真)UNDPガンビア事務所の国別プログラム行動計画策定のためのリトリートにて。栗原さんの参加で、UNDPの活動の中にUNVの貢献が反映されることになります。(C)UNV

ガンビアについて

ガンビアは、西アフリカ西岸に位置する国で、セネガルに取り囲まれています。主な産業はサービス業で、主に西欧からの旅行客対象の観光業が乾季中(11月~2月)は盛んです。「アフリカの初心者向き」と大手のガイド本にも紹介されている通り、治安はよく乾季は比較的過ごしやすいです。ガンビアを訪れる外国人に現地の人が友好的なことから「スマイリング・コースト」と呼ばれており、ガンビア人はそれを誇りに思っています。ガンビアは、マンディンカ、ウォロフ、ジョラ、フラニ、セラフリ、ソンニケそしてセレールなど多くの民族集団に分かれています。首都のバンジュールでは、主に英語とウォロフ語が話されていますが、地方ではマンディンカ語が主に話されています。 国民の9割強がイスラム教徒といわれていますが、キリスト教徒と平和的に共存しており、それぞれの祝祭日を共に祝っています。
(写真)ジャンジャンブレ市長、財務・経済省関係者、ボランティアセンター・プログラム担当の国連ボランティアとボランティア団体のネットワーク設立式典にて。栗原さんは、ガンビアのボランティアリズム促進の環境作り支援で中心的役割を果たしました。(C)UNV

ガンビアでの生活

ガンビアでは、交通量の多い車道以外は舗装されていません。雨季の間は、降雨量によって道路が変形し、水がはけるまで歩行が困難になります。年間を通してマラリアの危険があるため、蚊帳の中で就寝し、外食する際は、虫よけを使用します。電気と水道も長い時は数時間から半日止まります。主な交通手段は、乗り合いタクシーです。日本国大使館もJICA事務所も無いため、邦人間の情報交換は殆どありません。

UNVプログラム・オフィサーとしての活動

UNVPOとして15か国の異なる国々から採用された、28歳から70歳までの国連ボランティアが所属するUNVプログラムの管理・運営を行いました。赴任当初、UNDPの公共事業改革プロジェクトで約25人の国連ボランティアの採用が進められており、その他の国連機関のプロジェクトと合わせて50ポスト強の採用に関わる一切の業務を行いました。またガンビアから他国へ派遣される国連ボランティアの面接から着任までの諸手続きも行いました。

赴任当初は8人程度のボランティアが所属していたものの、国連ボランティアの印象は薄く手頃な短期専門家と位置付けられていました。私自身もオフィスや備品も用意されていない状態でした。赴任中の国連ボランティアには、現地の滞在許可証を持っていない人もおり、緊急用の無線も配布されていませんでした。まず、全ての国連ボランティアに新たに導入された滞在・労働許可証を取得するなど、国連ボランティアとしての業務に取りかかる以前の問題から対処していきました。UNDPとRC(国連常駐調整官)事務所には、国連ボランティアの数、彼らの所属先や契約期間を把握しておいてもらうため、毎月更新したリストを送りました。

UNVの現地事務所の存在が希薄であれば、UNVや国連ボランティアに対する期待が高まることはありません。UNVが経験もスキルもある専門家の集団だと認識してもらえるよう国連ボランティアの活動と貢献を出来るだけ多くの国連職員そして他の支援団体や各省庁の職員に知ってもらうよう努めました。各国連機関の管理層にそういったことが認められれば、優秀かつ経験豊富な国連ボランティアを増員することも、彼らの契約を更新できる可能性も増え、信頼されることによって任される仕事の量も向上します。UNDPガンビアは、職員20人程度の小規模な事務所だったので、自由参加であっても会議に出席し、UNDPの一員と早い段階で認識してもらうよう努めました。三枚程度のガンビアUNVニュースレターを刊行し、異なる分野で活躍する国連ボランティアの活動を随時紹介しました。ボランティア活動や行事を行った際には、写真付きのメールで全UNDP職員と共有しました。UNVPOには、国連ボランティアのモニタリングの経費が計上されているので、国連ボランティアと直属の上司を訪問し、職場環境や業務内容を確認しました。UNV本部の支援も受けているUNDPのボランティアセンター事業では、活動報告書をUNDPとUNV本部に提出しました。RCレポートにもUNVの貢献と成果を提出することで、UNDAF(国連開発援助枠組み)の進ちょく報告にもUNVの活動が含まれるようになりました。

毎年、12月5日の「国際ボランティア・デー(IVD)」の時期にラジオやテレビのトーク番組、コミュニティの清掃活動や研修といった様々な啓発活動を通じてボランティアリズムを推進しました。省庁、他の政府機関、NGOとも毎月会議を行い、共同活動計画や調整、また、ボランティア団体のネットワークの構築そして情報交換を行いました。ボランティア団体のネットワークは、UNVに会議の運営や資金提供、議事録やレポート作成そしてネットワークの促進を依存する傾向にあるため、彼らの自力連絡・運営を目指し、連絡係を選出、議事録も参加者が作成、年間計画も各自プランを作成するなど自主性を促し、自らネットワークを維持していけることを目指しました。VSOの国際ボランティアと研修を計画し、2011年の「ボランティア国際年」10周年(IYV+10)の最後の締めくくりのイベントとして実施しました。各団体から計30人を対象にボランティア団体ネットワーク構築・維持・活用に関する研修を行いました。
(写真)UNDPガンビア事務所の現地職員と栗原さん(左から2番目)。(C)UNV

国連ボランティアに関心を持つ皆さんに一言:

派遣時期や派遣先は現時点で考えすぎず、少しでも「国際協力」や「社会貢献」の分野に興味があったら登録だけでもしておいていいのではないでしょうか。国連ボランティアとして近い将来経験やスキルを生かして貢献できる場が沢山あると思います。

Profile —————————-

栗原真由花(くりはらまゆか)
UNVプログラムオフィサー
UNDPガンビア事務所

米系民間企業を退職後、英国で人権学修士を取得。帰国後、日本国内の難民支援NGOに勤務し、UNICEFフィリピン事務所のチャイルド・プロテクション部門でインターン。ヨルダンでイラクやパレスチナからの難民や庇護申請者対象の心理社会的ケアと非公式教育プログラムに従事。2010年より2012年までUNDPガンビア事務所でUNVプログラムオフィサーとして勤務。