椎野 佑梨さん:ナミビア

世界で活躍する日本人国連ボランティアからの現地報告(5)

今月の日本人国連ボランティアの紹介は、椎野佑梨さんです。椎野さんは、関西学院大学とUNVとのパートナーシップで行っている「国連学生ボランティア」プログラムを通して国連開発計画(UNDP)のナミビア事務所に2012年9月末から2013年1月末まで派遣されました。大学在学中に培ったウェブサイト制作の技術を十分に発揮し、現地国連の支援活動を後方支援する重要な役割を果たし、現地国連スタッフやUNV本部のスタッフから高い評価を得ました。以下、椎野さんからの報告を紹介します。
(写真)ナミビアの国連ボランティアの仲間たちと。左が椎野さん

ナミビアについて

ナミビアは1990年に独立した新しい国です。日本の約2.2倍の国土に対し人口は約220万人ととても少ないです。多民族国家のため、公用語は英語であり、さまざまな民族の文化や伝統に触れる機会があります。アフリカの中で比較的豊かな国ではありますが、裕福な白人層と大部分の低所得層との間での貧富の差が激しく、黒人を中心とした多数の失業者が存在します。

ナミビアでの暮らし

私は首都のウィンドフックで生活をしていました。首都には大きなショッピングモールやシティセンターもあり、想像していたアフリカとは違い、住みやすいところでした。しかし、少し離れると電気や水道がない、トタン屋根に壁というような家に住んでいる人々もいて、首都でも貧富の差を感じることが沢山ありました。初めての途上国での生活に最初は不安もありましたが、ナミビアの方々が明るく社交的な性格なので、すぐに打ち解けることができました。
(写真)村の子どもたちと。右から2人目が椎野さん

国連学生ボランティアの活動

UNDPナミビア事務所に着任後は、UNVナミビア・フィールド・ユニットに所属し、ウェブサイトやドキュメンタリーフィルムの制作、ニュースレターの発行などを通して、主にアドボカシー活動に従事しました。私が同事務所で働く以前はUNVナミビア・フィールド・ユニットのウェブページはなく、UNDPナミビアにもウェブサイト自体は存在したものの更新する人がいなかったために十分な情報発信ができている状態ではありませんでした。私の任務は、それらのウェブページ制作と更新、また、任務終了後も現場で継続して更新し続けられるために、同僚にウェブサイトの運営方法を教えるトレーニングでした。ウェブページを制作するうえで自分からデザインの提案をするなど積極的に仕事ができたことが自信へと繋がりました。トレーニングでは、ガイダンスブックを作成して、できるだけ同僚が理解しやすくするための工夫をしました。他にも、ドキュメンタリーフィルムの制作とニュースレター4通を発行し、視覚的な情報ツールを形として残せました。それらを周りの同僚に評価されたことが大きな達成感となりました。

アドボカシー活動以外にも、関西学院大学でプロジェクト・サイクル・マネジメントを受講していたことから、ヤング・ジェネレーション・プロジェクト(若年層向けのプロジェクト)にも参加させて頂きました。ナミビアの失業率は51.2%と非常に高く、原因として特に若者の経験不足が大きな問題となっています。このプロジェクトはそのような若者たちに仕事の機会を与えることを目的としたものです。実際に大学で学んだプロジェクト・サイクル・マネジメントの手法を実践することができたので、非常に興味深く、学びの多い経験となりました。さらに、実際に失業率の現状を目で見ることができる現場でこのようなプロジェクトに携われることは、活動上で大きなモチベーションにもなりました。
(写真)現地のスタッフと共にドキュメンタリーフィルムを編集している様子

活動を通して学んだこと、得たこと

私は何か途上国へ貢献したいと思い、このプログラムへ参加したのですが、「期待された使命を果たす」には気持ちだけではだめだということをこのプログラムを通して痛感しました。学生ボランティアとして国連で働く中で、英語能力はもちろんのこと、派遣国の状況、自分の派遣されている機関や世界情勢の知識は最低限必要であり、そのうえで専門性も求められます。私の場合、このプログラムへ応募した時点ではそれらの能力が十分でなかったため、派遣までには2年間の研修を積み、ビジネス英語や情報・通信・技術(ICT)、国連機関について学びました。派遣前に行った事前研修を実際に仕事に活かすことができ、「私のような学生でも努力をすれば国連という組織で国際貢献の仕事に携われる」。このことが大きな自信に繋がりました。そしてなにより、「勉強することの意味」を深く理解することができ、このプログラムへ参加する以前と比べて勉強に対する姿勢が変わり、学問にさらに力を入れて取り組むようになりました。

また、様々なバックグラウンドを持つ、価値観の異なる人々とともに仕事をすることは想像以上に困難な事でした。しかし、相手の考えを理解しようとすることで、自分の視野を広げることができたと同時に、お互いのバランスを考えて協調し合い、ひとつのことを成し遂げることができた時には大きな達成感を覚えました。そのような環境で働くことで、グローバルな世界で仕事をする術が少しは身についたと思います。
国連学生ボランティアプログラムの参加にあたり、国連や大学、同僚やその他多くの人に支えられ、助けられました。感謝の気持ちを忘れず、この貴重な経験をもとに、世界貢献できる人材になるように努力を怠らず今後もさまざまなことに挑戦していきたいです。

Profile ——————————–

椎野佑梨(しいの・ゆり)
2012年度国連学生ボランティア、UNDPナミビア派遣。
桃山学院高等学校卒業、関西学院大学国際学部在学中。大阪府出身。