山田 貴彦さん:リベリア共和国 国連リベリア・ミッション(UNMIL)選挙支援部門

1. UNVに参加されたきっかけ、経緯についてお話いただけますか。

会社勤めをしていた頃より、定年後は海外ボランティア活動に携わりたいと考えていました。
特に、1993年にカンボジア選挙支援活動中にUNVの中田厚仁さんが殉職されたことを聞いて、『危険でも誰かがやらなければならない事は、将来ある若者より年寄りに委ねるべき』と考えるようになりました。幸い58歳で初孫に恵まれたことで人生の責任を果たした気持ちになり、会社を辞めボランティア活動をすることにしました。JICAの仕事でハイチ、トルコに5年間派遣して頂いたあと、UNVの選挙支援スタッフに応募いたしました。その結果、7人の日本人UNVが選挙支援オフィサーとしてリベリアに派遣されることになりました。私以外は何れも若い方々(女性5名、男性1名)でしたので、決して危険なことの近づかないよう話し合いました。

2. 現地ではどのような業務をされていましたか。

14年間にわたる内戦で国土が荒廃したリベリアの復興支援のため、国連ミッションには治安維持のため1万5千人の国連軍、復興支援のため1,500人近いシビリアンと選挙支援に150名、その他の支援活動に約100名のUNVが派遣されました。選挙支援活動は、内戦当事者の武装解除が終了した2004年10月から選挙の終わる2005年11月まで続きました。私は他の13名のUNVと共にグランバッサ県というところに配属されました。それぞれの選挙支援オフィサーは、選挙管理委員会スタッフと二人でチームを組んで活動しました。私は担当地域に21箇所の選挙センターの設立、同センターのスタッフ100人の採用・トレーニング、選挙人名簿の作成・精査、選挙啓蒙活動、投票・開票・集計作業と選挙の全行程に亘る支援活動などに関わりました。この他、日常業務としてコンピューターによるデスクワーク、四輪駆動車を運転して村々の選挙センターへ情報伝達、資機材・スタッフの輸送などにあたりました(写真右上 有権者登録の研修風景。写真右下 投票日に投票所に並ぶ現地有権者の人々)。

3. UNVとして参加して良かったと思うことは何ですか。

私が所属したグランバッサ県の選挙支援チームには、13の国から14名のUNVが派遣されてきており、毎日さまざまな国籍の人々と協議・協調して業務を遂行したことはUNVならではの貴重な体験でした。また、14年間に及ぶ内戦によって満足な教育を受けられなかった20歳前後のリベリア青年には笑顔が少ないように思われ心が痛みました。世界のどの地域でも紛争は未然に防がなければならないこと、不幸にも内戦に巻き込まれた国においては、一日も早く治安の回復と生活の安定を図ることが必要だということを痛感しました。今後もこの分野におけるUNVの活動を期待します。私は任期中に66歳を迎え、派遣されたUNVの最高齢の一人となりましたが、10ヶ月におよぶ任務を無事に完了できたことは一緒に活動したUNV仲間のお蔭であり、その協力に心から感謝しています。

4.逆に現地で苦労された点は何ですか。

私が担当した農村地帯は特に就学率が低く、設置した21センターのスタッフの中にはカメラ用電池の+-が解らない人もいて、トレーニングでは戸惑うことが多々ありました。
また、雨季におけるジャングルの中の移動では、突如木の橋が流失していたり、泥道に車輪を取られて村人総出の応援を受けたり、時には国連軍の救援カーに救出されるなど日本では経験出来ない貴重な体験をさせて頂きました。しかし、何事も『一日一新』の経験と常に前向きに受け止めていたため特に苦労を感じることはありませんでした。

5.その他、UNVにこれから参加されようという方へのアドヴァイスをお願いします。

UNVが派遣される地域は、潜在的に治安・衛生・生活上の厳しい問題を抱えています。このため、場合によっては将来ある青年より社会的責任の終えた年配者の方が相応しい場合があると思います。リベリアのミッションでは欧米から50歳代以降の参加者も多くいらっしゃいましたが、皆さんはこれまでの長い経験を活かして元気に活躍されていらっしゃいました。   若い方々には、安全には十分留意して決して無理をせず、焦らず一つずつ経験を積まれて、次のステップへの礎を築かれることをお勧めします。

右奥・山田貴彦さん、
左・UNVの同僚関口洋介さん、
中央・同じく辻澤明子さん、
右端・現地訪問中のケビン・ギルロイUNV本部・特別活動課長。
モンロビアにて。