萩原 葉子さん:インドネシア UNDP (環境)

萩原葉子さん 
インドネシア UNDP 環境スペシャリスト

萩原葉子さんは、インドネシアの国連開発計画(UNDP)事務所で,環境担当のオフィサーとして活動されました。JPOとしてインドで働かれた後に、UNVに参加され、後豊富な経験を元に活動され、その後も国連機関のもと引き続き環境関係の仕事に携わっておられます。

1.UNVに参加した経緯について教えてください。

インドのUNDPニューデリー事務所でJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)として環境・エネルギー関連のプロジェクト管理に携わって3年目にUNDPジャカルタ事務所でUNVを募集していることを知りました。ちょうどJPO後の進路を模索している時でもあり、自分の希望する環境の分野で、しかも他のアジアの国でそれまでの経験をもとに仕事が継続出来るという理由で応募しました。もともと私は大学では法律専攻でしたが、民間(石油会社)に6年間勤めて退職し、その後国際関係論を学ぶために米国の大学院に留学しました。この分野に入ったきっかけは、大学院で環境とエネルギーという副専攻があり、温暖化など地球環境問題の議論の多くが実は形をかえた南北問題であることを知って、自分は国連のような中立の機関で国際協力によって実際的な貢献がしたいと感じたことです。その後、温暖化対策のみならず幅広い環境問題を扱うこととなり次第に関心の幅も広がりました。

2.インドネシアでのUNVとしての仕事の内容は?

担当していたのはいわゆる「地球環境問題」といわれる生物多様性の保全や温暖化対策、オゾン層の保護などに係わる案件です。インドネシアはこれらに関する国際環境条約の当事国であり、UNDPはインドネシア政府がこれらの条約にもとづく権利や義務を最大限行使できるようにするための助言や協力を実際のプロジェクトを通じて行っています。私の仕事は相手方のインドネシア環境省と密に連絡をとりながらプロジェクトの企画、実施、および評価をし、かつインドネシアの他の省庁や教育機関、環境NGOおよび一般企業などの意見も取り入れていくというものでした。また、赴任後間もない2002年6月には「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)」の第四回事前会合がバリで開催され、UNDPやUNVが主催するいくつかの会議・展示の準備・実施にも携わりました。地方分権化が進むインドネシアでは経済開発と自然資源の持続的利用とのバランスがますます難しくなりつつあり、環境省の役割も見直しが必要になっています。この意味でUNVの仕事は政府のニーズに応じたものであったと思われます。

3.UNVとして赴任して良かったと思うことはどんなことですか?

インドネシアの人々に近い感覚で仕事をすることが出来たこと。ジャカルタにいたUNVのほとんどはモラルが高く柔軟性もあって、急を要する数多くの業務を手際よく(?)、しかし手を抜かず片付けていました。それに加えて外国人のUNVでもインドネシア人職員と同じ食事をとり、インドネシアの人々に混じって暮らし、UNVは(手当てが比較的低い割に)勤勉で質が高いと、派遣先機関での評判は高かったように聞いています。UNVとしてのジャカルタでの2年間は国連職員のあるべき姿を考えるうえで貴重な体験でした。開発援助に対する真摯な姿勢を少しでも示すことが出来たとしたら満足です。

4.逆にUNVとして赴任中、苦労した点

どちらかといえば苦労したというよりも残念だった点は、仕事がジャカルタに集中していたためインドネシアの他の地域を訪れる機会が少なかったこと。UNVにもいろいろありフィールド専門の人もいれば事務所と関係官庁との往復というケースもあって、私は仕事の性質上後者に近かった気がします。広大で多様性に富むインドネシアではそれぞれの地方の現状はやはりそこへ足を運んでみなければわからないことも多く、すばらしい政策の計画を作っても実行困難だったりします。今度インドネシアを訪れることがあれば、是非遠隔地にももっと足をのばしてみたいです。

5.UNV後の計画(今後の進路)について

長期的な展望としては、環境分野での専門家として経験を積み、今後も途上国の環境問題の改善に寄与したいと考えています。将来は研究機関や大学、NGOまたは他の援助機関なども視野に入れています。短期的にはこの後、UNEPのジュネーブ事務所へプログラム・オフィサーとして赴任することが決まりました。これまでとはかなり事情の異なる紛争後の地域(アフガニスタン、イラク、パレスチナ等)の環境プログラムを扱う予定です。インドネシアでのUNVの経験が評価されての今回の採用となったのは嬉しかったです。

6.UNVを目指す人への助言

自分の専門とする分野の国際会議や国際機関の海外短期研修プログラムなど、機会をつくって積極的に参加しておくといいと思います。

実務経験者が主に参加するこのような研修は大学院の授業とはかなり内容も異なり、ネットワークも広がりますし、普段からいろいろな問題の議論に英語で参加することに慣れておけば面接やプレゼンテーションで幾分緊張せずに望めるようになると思います。

専門知識のみならず、「場慣れ」していることも国際機関では重宝します。