寺見 興生さん:ラオス UNDP (ガバナンス)
寺見興生さん (ラオス)
ラオス UNDP配属 (2001年4月~2003年7月)
職位:行政部門プログラムオフィサー
1.UNVになったきっかけは何ですか?
UNVに応募したのは、前の勤務先の海外赴任を終え、帰国してしばらくした時期でした。中長期的な視点でキャリアプランを練りなおす過程でUNVのことを知り、まずは応募しました。
正直言って、こんなに簡単に国際機関で働けるとは思いませんでした。履歴書をUNVの事務所にファックスして、数週間後に簡単な面接があり、ロスター登録後半年位で、ラオスからオファーが来ました。
日本での比較的恵まれたポジションを捨ててまでUNVになることにはやや抵抗がありましたが、長い目で見れば、こういった経験はプラスになるのではと思い、オファーを受諾しました。
2.仕事の内容は、簡単に言うとどのようなことでしたか?
国連開発計画(UNDP)ラオス事務所にて、プログラム・オフィサーとしてラオス政府の各種政策を支援するプロジェクトを運営していました。当初は、WTO(世界貿易機構)加盟支援、税制改革などのマクロ経済関連が担当でした。途中でIT政策支援も加わり、上司が不在のときは部門長代理としてチーム内の取りまとめていました。担当分野での、他の国際機関(IMF,ADB、UNCTAD等)や、日本を初めとする各国政府との連携・調整も重要な仕事でした。仕事の内容的には、ジュニア・プログラム・オフィサー(JPO)の仕事に近かったのではと思います。(実際、赴任時にはJPOから仕事を引き継いで、離任するときはJPOに引き継ぎました)。興味がある方は、UNDPラオスのウェブサイトをご覧下さい(www.undplao.org)。
3.寺見さんにとってUNVとは?
この2年余りは、私にとってある意味サバティカル(sabbatical)でした。生活を維持しながらも、日本での会社員生活とは非常に異なる世界で、自分の興味ある分野で経験を積み、知己を広げることが出来ました。また、次のステップに向け、準備に十分な時間をとることができる、またとない機会でした。
4.7年の銀行での勤務経験を経てということですが、それがどのようにUNVでの仕事に生かされましたか?
直接的には、ニューヨークでの2年間の勤務経験が役に立ちました。既に外国人の同僚や顧客と仕事をした実績があったので、UNDPの職場にも難なく溶け込めました。本質的な仕事の内容としては、UNDPのプログラム・オフィサーの仕事は、ゼネラリストとしての管理能力が求められるので、銀行の日常業務で学んだことを応用できる機会が多かったです。開発分野での職歴が全くなかった私が、UNDPで職務遂行できたのも、銀行員時代にひと通り仕事のやり方を習得できたからだと思います。その点では、育ててくれた銀行には大変感謝しています。
5.UNVとして派遣中に一番苦労した点
仕事面では、職場の上司・同僚にも恵まれたこともあり、特にありませんでした。生活面では、やはり途上国なので、それなりの不便はあります。ただ、ビエンチャン(ラオスの首都)は、水道・電気などのインフラも整っており、治安も安定していて、ラオス人も穏やかな性格の人が多いので、比較的住みやすいところです。
6.UNV活動でもっとも楽しかったこと、あるいは充実していたと思うこと。
ひとつは、国際機関やラオス政府の高官、各国大使等、国や組織をリードする方々が一同に会するような、国の政策レベルの会合に関わることができた点です。丁度私が離任した頃は、ラオスの貧困削減戦略ペーパー(PRSP)や、円卓会議(RTM)等が盛り上がっていた時期なので、そのプロセスに参加できなくなったのは少し心残りです。
また、職場の上司や、同世代の日本人・外国人との交流も刺激になりました。日本の会社員ですと30歳代前半にもなると、いろんな意味で「落ち着いて」きますが、ラオスの同僚は、これから新しい分野に挑戦したり、将来のキャリアプランを語り合ったりと、元気な方が多かったです。
失礼ながら、UNVの給料(VLA)はとても高いとはいえない水準ですが、それを補って余りあるほど、貴重な経験だったと思います。
7.これからUNVを目指す人に助言等あれば。
主に、日本の民間企業で働かれている方へのメッセージです。
UNVが万人向けのポジションだとは思いませんが、2年前の私と同じような、これからのキャリアについて考えていらっしゃる方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。長引く不況の中、思い通りのキャリアプランが今の職場では得られない時、UNVの数年間は、魅力的な仕事と、世界の俊英との人脈と、考える時間を与えてくれるでしょう。一番の懸念は英語かもしれませんが、海外勤務や出張で、一応英語で仕事が出来る水準にあれば大丈夫だと思います。より大事なのは、コトバそのものよりも、企業で培った職務遂行能力です。
また、将来国際機関を目指す方については、UNVはエントリーポイントとして検討に値すると思います。JPOの前段階として利用した方も何人か見ました。国連も(少なくとも他の世界と同じ程度には)コネクションがものをいう世界です。そういう点でとりあえず中に入ることは有効かもしれません。しかし、最近はUNDPでも、組織の下から上がってくる人材を育てるだけではなく、国連外部で責任あるポジションにある方を、積極的に上級職に登用する方針に変わってきているようです。
何か質問がございましたら、私宛ご連絡下さい。
e-mail:kosei.terami@yale.edu
8.UNV後の計画について
今秋より、経営学修士(MBA)取得の為、アメリカの大学院に進学します。当初は、公共政策や国際開発系のコースも選択肢のうちでしたが、最終的にMBAを選んだのは、たとえある組織が行政や開発等の専門家を多数擁したとしても、彼らが力を発揮できるかどうかは、最終的にはその組織内のマネジメントやリーダーシップ次第であることを、現場で学んだからです。長期的には、公的セクター/ビジネスのどちらの世界でも、組織をリードできる人材になれればと思っています。