中森 あゆみさん:南スーダン

世界で活躍する日本人国連ボランティアからの現地報告(3)

UNVが事業実施に協力している外務省の「平和構築人材育成事業」から南スーダンのUNDP事務所に国連ボランティアとして派遣されている中森あゆみさんと池田祥規さんを紹介します。
現在南スーダンでは600人以上の国連ボランティアが国連PKOミッションや、UNDP等の国連機関を通じて南スーダンの国づくりの支援をしています。そのうち、日本人国連ボランティアは、中森さん、池田さんを含む6人が活動しています。
(写真)元女性兵士・WAAFのための社会復帰プログラムで研修を受けた女性たち(中央が中森さん)

南スーダンという国

南スーダンは、20年に及ぶ内戦を経て、2011年にスーダンより独立した世界で一番新しい国です。日本の国土の2倍弱の面積に人口約800万人が暮らしています。他方で、独立後も隣国スーダンとの関係においては、油田地帯のアビエイの帰属問題など解決すべき問題は山積しており、情勢は非常に不安定です。日本の皆様には、同国における国連PKOに日本の自衛隊が派遣されたことなどでも記憶に新しいかもしれません。

(写真)家庭菜園での収穫物を売ったり、レストランを運営したりして収入を得ることができるようになりました

南スーダンでの暮らし

私達は両名ともジュバに駐在し、UNDP職員用のコンパウンドの中に住んでいます。南スーダンではセキュリティ上の理由から、国連が定めた安全基準を満たす住居に住むことを義務づけられており、このコンパウンドもそのひとつで、高い壁に囲まれた敷地内で暮らしています。外国人を狙った犯罪も多発しているジュバにおいて、生活の安心は必須です。
(写真)アッパーナイル州での部族やコミュニティのリーダー達を対象にした第1回のConflict Transformationトレーニングの様子

国連ボランティアとしての活動

―中森あゆみさんの活動

私(中森)は現在、DDR(兵士の武装解除、動員解除及び社会復帰)プログラムにジェンダー専門家として派遣されています。これまでに武装解除、動員解除された兵士のうち、女性兵士、および様々な形で軍を支えた女性たち(Women Associated with Armed Force: WAAF)の数は全体の半数以上に上ります。UNDPは兵士の「社会復帰」全般を支援していますが、私は特に、WAAFの女性たちが家族やコミュニティに受け入れられ、生活を再生させるためのプロジェクトを担当しています。

あらゆる支援に言えることですが、紛争・独立直後という特殊な状況であっても、当事国のオーナーシップをもとに事業を進めることは非常に重要です。私たちUNDPのDDRチームも政府DDRコミッション内に常駐し、日々共に業務を行っています。また、首都および10州すべてに国連ボランティアが配属されており、各々が高い専門性を持って業務にあたっています。また、その多くは、南スーダンはもとより、アフリカ国籍の同僚たちです。私の主な任務は2012年12月に終了予定の現行フェーズの成果と課題をジェンダーの視点で改めて評価すること、また、新フェーズでは1万人のWAAFを対象とした社会復帰のプロジェクトを立案することです。

直面する課題は様々です。広大な国土に厳しい自然環境、そして長年にわたる内戦により道路等のインフラはほぼ皆無です。従って、地方出張は基本的に国連機での移動となりますし、それでも国土のすべてをカバーできません。また、社会復帰プログラムは職業訓練を柱とするのが通例ですが、識字率が非常に低いことや、職業訓練を行ってもこの労働力を吸収する産業そのものが見当たりません。また、慣習法等に裏付けられた女性の地位の著しい低さなども改善していかなければなりません。実際に事業を実施する能力を備えたNGOの数なども限られています。

それでも希望はあります。パイロット・プロジェクトで立ち上げたレストランで働く女性たちの生き生きとした笑顔。様々な偏見に負けない強い自信を培うプロジェクトを作りたいと思っています。

―池田祥規さんの活動

私(池田)は現在、Community Security & Arms Control(CSAC)プロジェクトに、Peace & Community Security Officerとして従事しています。南スーダンで紛争の話をする際、冒頭の南北スーダン間の紛争が1つ、そしてもう1つには国内でのコミュニティ間の紛争があげられます。私達のプロジェクトは後者の問題を南スーダン政府を通じて解決するべく、これまでは小型武器回収の支援、水資源の奪い合いや犯罪を減らすための、井戸や警察の駐屯所といったハードウェアの建設を主に実施していました。現在私が主に従事しているのは、それらと並行して今後拡大していく予定のConflict Transformationのコンポーネントで、クイックインパクトを重視してきたハードウェアを足場に、中長期的なコミュニティレベルでの紛争解決のメカニズムを構築するべく、コミュニティのリーダー達を動員し、トレーニングを重ねていきます。

プロジェクトは現在も部族間の抗争が激しいジョングレイ州にて2008年に始まり、現在は7つの州で展開されており、それら全ての州に国連ボランティアが配置されています。私は首都ジュバにてそれらの活動の進捗管理、モニタリング・評価、チームワークの強化等を中心に担当しています。

コミュニティレベルの平和構築プロジェクト、特に戦後間もない期間において、当地のオーナーシップを促進しながら効果的に復興を遂げるには、ソフトとハード、ボトムアップとトップダウンのアプローチの連携が重要です。一方南スーダンにおいては、地方・コミュニティでは政府の認知度の低さ、水や電気、住居といった基礎インフラの不在、教育施設の不足、識字率の低さ、治安の問題等々、復興のための基盤を見つけ出すことも容易でなく、また中央に目を向ければ政府の財政状況や能力不足といった課題が山積しており、各開発援助機関もどこから手をつければよいか、試行錯誤を重ねています。国、地方、そしてコミュニティ、それぞれが自立へ向けて成長するためには、彼ら自身の息の長いコミットメントはもちろんですが、それに加えて国際社会、そしてその一員としての自分自身のコミットメントがいかに重要かを胸に、これからも日々精進を続けます。
(写真)トレーニングの参加者達と(中央が池田さん)。トレーニングで学んだ内容をそれぞれがコミュニティに持ち帰り、実践していきます

国連ボランティアに興味を持っている人に一言

ボランティアとは言え、実際にはチームの一員として責任ある、またプロフェッショナルとしての貢献が期待されていることを日々痛感しています。また特に相手国の持つ文化的な背景もさまざまで、仕事の進め方ひとつとっても相手を理解する力、時には忍耐力をもって対話を重ねていくことが必要です。しかし同時にこうした丁寧な仕事のやり方は日本人の得意とする部分でもあるように思います。開発分野に限らず、社会人としての実務経験を積んだ方には是非自信をもって挑戦してみてください。

Profile —————————-

中森あゆみ(なかもり・あゆみ)
DDR(兵士の武装解除、動員解除及び社会復帰)・ジェンダー・スペシャリスト
UNDP南スーダン事務所(危機予防・復興ユニット)

米国コロンビア大学大学院(紛争解決・平和教育専攻)修了後、NGO、外務省、国際協力機構にてバングラディシュ、エチオピア駐在等を経て平成23年度平和構築人材育成事業に参加し、2012年6月から現職。東京都出身。

池田祥規(いけだ・よしのり)
Community Security & Arms Control Project(CSAC)・ピース・アンド・コミュニティセキュリティ・オフィサー
UNDP南スーダン事務所(危機予防・復興ユニット)

早稲田大学理工学部卒業後、英国ブラッドフォード大学にて平和学を学んだ後、英国グラスゴー大学大学院(開発学修士)、NGO、開発コンサルティング会社にて中国、ヨルダン、スリランカ駐在等を経て、平成23年度平和構築人材育成事業に参加し、2012年5月から現職。佐賀市出身。