井筒 穂奈美さん:サモア

世界で活躍する日本人国連ボランティアからの現地報告(4)

国連ボランティア計画(UNV)は、2001年以降、世界各国の大学と連携して、学生をボランティアとして途上国に派遣するプログラムを実施してきました。国内では2004年に関西学院大学と協定を締結し、これまでに同大の学部生・大学院生約70人を15か国に派遣しました。派遣学生は約5か月間、UNVの現地事務所の調整の下、開発途上国の国連や政府機関、NGO等に配属され、その一員として現地での活動に携わります。今回は、関西学院大学の「国連学生ボランティア・プログラム」で2011年3月から5か月半、UNDPサモア事務所に派遣された井筒穂奈美さんが、現地での活動を紹介します。
(写真)サモアの首都アピアで2011年7月21日に開始されたRIO+20太平洋準備会合でUNDPの広報ブースを担当する井筒さん ©関西学院大学/UNV

国連学生ボランティアの活動

こんにちは。関西学院大学法学部4年の井筒穂奈美と申します。私は高校の授業で開発途上国の抱える問題について学び、その現状を自分の目で見てみたいと思ったことから、国連学生ボランティアに応募しました。出発前は現地での業務や生活に対して不安な気持ちもありましたが、大学やUNV事務局など周りの方々のサポートを受け、大変貴重な経験をすることができました。

派遣前は派遣先機関とのマッチングのために、英文履歴書作成や電話面接の対策をしました。それと並行して、現地での業務遂行のためのビジネス英語や情報通信技術(ICT)、国際関係や国際機関についての研修も大学で受けました。また、開発途上国での生活や安全管理についても学び、現地での業務に向けて準備を進めました。

UNDPサモア事務所に着任後は、環境ユニットに所属し、プロジェクト運営の補助や広報に従事しました。プロジェクト運営の補助では、会議や現場視察の準備・調整、書類の管理を行いました。私が派遣されたオフィスは書類がうまく管理されておらず、大きな問題となっていたことから、派遣期間中を通して特に力を注いだ業務が書類管理の徹底でした。まず積み上げられている書類の分類からスタートし、初めは現地職員の方はあまり協力的ではありませんでしたが、きちんと管理すれば仕事がしやすくなることを理解してもらうことで、徐々に書類管理に協力してくれるようになり、最終的には状況を改善することができました。

広報活動としては、国際機関やサモアの大学のイベントで、UNDPの広報ブースの設営を行いました。他のインターンと共に掲示物を作成し、資料の配布やDVD上映を通して来場者にUNDPのプロジェクトの説明をしました。特に印象に残っているのが、サモア国立大学での広報活動で、国連のことを知らなかったサモア人の大学生が私の説明を聞き、国連に関心を持ってくれたことが嬉しかったです。

また、プロジェクトの現地視察にも同行させてもらい、プロジェクトを実施している村を訪ねて、村人へのアンケート調査や酋長・婦人会の会長へのインタビューを行いました。普段、オフィスでのデスクワークが多かったことから、実際に村に赴き、受益者である村の人々と話し、彼らの意見を聞くことで、UNDPが取り組む活動について、より深く理解することが出来ました。

現地では、サモア人の暮らす村で家を借りて住んでいました。週末には地元の方の家に遊びに行き、サモア語を教えてもらったり、サモア料理を食べさせてもらったりと、現地の文化に触れる機会がたくさんありました。サモアの方々はとても友好的で面倒見がよく、彼らのおかげで、初めての一人暮らしも楽しく過ごすことができました。

帰国後は、いままで以上に大学での勉強に注力しました。それは、国連学生ボランティアとしての活動を通して、自分自身のスキルアップの必要性を強く感じたからです。派遣前から、語学には力を入れて勉強していたものの、国際的な組織で成果を出すためには、まだまだ語学力が足りないことを思い知りました。そして何より、専門性や知識がなければ、いくら思いがあっても、現地の人々には何も貢献することが出来ないことに気づき、大学での学問にさらに真剣に取り組むようになりました。また、国連学生ボランティアへの参加にあたり、国連や大学、家族や友人など、周りの人々から多大なるサポートをしてもらったことから、その恩返しのために、今後、参加を志す後輩の指導にもあたっています。

(写真)サバイイ島・ファガマロ村での、Community Based Adaptationプロジェクトに関しての調査活動の様子。写真左が井筒さん©関西学院大学/UNV

活動を通して学んだこと、得たこと

国連での活動を通して、価値観や考え方の異なる人々と共に物事に取り組むことの大変さと面白さを学びました。派遣先では、現地職員のみならず、世界中から集まった人々と協力しあい、業務を進めなければなりませんでした。それまでは、「国際交流」しか経験したことがなかったため、様々な考え方を持つ人々と「働く」ということは、想像以上に大変なものであることを知りました。しかし、同時に、多様なバックグラウンドを持った人々が、それぞれの能力を活かして互いに補い合い、問題に取り組むことの面白さや素晴らしさにも気付くことができました。

また、途上国での不便な生活を通して、日本では「当たり前」のように感じていた豊かな暮らしが、世界では「当たり前ではない」ことを知りました。普段の生活が、多くの人々に支えられていたことに気付き、日々の生活に心から感謝するようになりました。

学生時代に、このような経験をすることの一番の意義は、自分に自信を持つことができるようになることだと思います。派遣中は、決して楽しいことだけではなく、大変なことや辛いこともあります。知らない土地での生活や初めての業務など、私自身「日本に帰りたい」と思ったこともありました。それでも、周りの人々に助けてもらいながら、一つずつ、目の前の壁を乗り越えることで、プログラムの修了時には、大きな自信を持てるようになりました。学生のときに、何か自信に繋がる経験をすることは、社会に出てチャンレジしたり、一歩踏み出したりする際に大きな支えになると思います。

サモアで、国連機関やJICAで活躍されている日本人の方々との交流を通して、非常に刺激を受けたと共に、日本が世界で果たす役割の大きさを知りました。そして、私も、日本人として世界のために出来ることを考え、自分の強みを活かして働きたいと思うようになりました。国連学生ボランティアで得たことを糧に、世界の発展に貢献できる人になれるよう、今後も様々なことにチャレンジしていきたいです。

(写真)近所に住むサモアの方々と。自然豊かなこの村には、南太平洋のゆっくりとした時間が流れています。©関西学院大学/UNV

Profile —————————–

井筒穂奈美(いづつ・ほなみ)
2011年度国連学生ボランティア、UNDPサモア・マルチカントリーオフィス派遣。
神戸市立葺合高等学校卒業、関西学院大学法学部在学中。兵庫県出身。